歴史を変えた10の薬
著者名:トーマス・ヘイガー
発行日:2020年1月29日
税込価格:2200円+税
数年まえにロンドンに出張したときのことだ。
ふいに一日ぽっかり時間があいたので、多くの観光客に混じって大英博物館に出かけた。そこで、驚くべきものを目にした。一階の光あふれる大きなギャラリーにテーブルがひとつあって、その上におびただしい数の薬がびっしり並んでいたのだ。それはひとりのアーティストと医師による作品で、平均的な英国人が一生涯で飲む処方薬が一万四千錠あることを示していた。錠剤やカプセルが、長い網状の織物に織りこまれ、簡単な解説文が添えられ、約一四メートルの長さの展示テーブルいっぱいに広げられていた。
私は目にしているものが信じられなかった。本当にこんなに多くの薬を私たちは飲んでいるだろうか。
答えはノーだ。むしろ、私たち米国人はもっと飲んでいる。その展示は英国人に合わせてあった。薬の服用に関しては、英国人は米国人の足元にも及ばない。米国人の半数以上が、少なくとも一種類の処方薬をつねに飲んでいて、大半の人は二種類以上を飲んでいる(研究によって幅があるが、一人あたりの処方薬の数は平均で年間四〜一二種類のあいだらしい)。
(中略)
歴史的にみても、現在の米国ほど多くの薬を消費し、薬のためにこれほど金を費やしている国はない。
そして薬には重大な影響力がある。薬は私たちの平均寿命を数十年延ばし、米国の高齢化に重要な役割を果たしている。薬は女性の社会的な選択肢と職業上の選択肢を変えた。薬は私たちの精神の見方を変え、法律に対する人びとの行動を変え、国際関係を変化させ、戦争の引き金になった。
そう考えると私たちホモ・サピエンスは、薬を作って使う種として、「ホモ・ファーマカム(薬を携えたヒト)」にでも名前を変えるべきかもしれない。私たちは「薬の民」なのだ。
本書は医療用の(つまり、レクレーショナル・ドラッグではなく合法で、大半が処方箋を必要とする)薬に注目し、いかにして私たちが現在の状況にたどりついたかを紹介している。ここで語るのは、医療史を変えた一〇の薬にまつわる簡潔で、生き生きとした小史である。それぞれ共通のテーマでつながっていて、ひとつの物語から導かれるようにつぎの物語へとつづく。共通のテーマのひとつが、薬の進化である。
(プロローグより)
仕事が速い人が無意識にしている工夫
著者名:中谷彰宏
発行日:2020年1月18日
税込価格:1300円+税
仕事は、「正しく速く」と求められることがあります。
これは「正しく」と「速く」の2つの要素があります。
「正しく」のほうには矛盾があります。
正しさはその時点ではわかりません。
「あれが正しかった」というのは、後でわかることです。
実際は、速い方と遅い方しかないのです。
たとえば、著者が編集者に企画を出しました。
Aさんが「えっと、どうですかね……」と言っているうちに、Bさんが「うち、それでやらせてください」と、その企画で出版してしまいました。
その本が売れるかどうかという正しさは、その時にはわかりません。
一方で、速さはその場ですぐわかります。
正しさと速さを比べたら、速い方が選ばれます。
さらに、速い方は修正の時間を持つことができます。
結局、速い方が正しいのです。
「遅くて正しい」は、ありえません。
人生においては、速くて正しい方と、遅くて正しくない方という選択肢しかないのです。